――まず、このプロジェクトはどのように始まったのでしょうか。

井上さん最初のきっかけは、施主のご夫妻が武田さんの建築を雑誌で見つけたことでした。もともと長く建築家を探していたそうなのですが、初めて「この人にお願いしたい」とお二人の意見が一致した。そこから、この計画が動き始めました。

武田さん実はこの土地は、更地のとき畑のレッスンの場として使われていました。そのつながりをたどると、僕の妻とも接点があったんです。「この土地に呼ばれたのかもしれない」と感じるようなご縁でした。

井上さんその後、施主であるご夫妻から創造系不動産にご相談をいただき、僕も打ち合わせに入るようになりました。
――打ち合わせを経て、「かなり難易度が高いプロジェクトだ」とわかったんですよね。
井上さんはい。話を聞いていくと、「これは設計だけでは前に進まない案件だ」とすぐに分かりました。住宅ローンや権利関係、敷地条件など、整理しないといけない課題がいくつもあったんです。でも、条件をひとつずつ見極め、どこに可能性があるかを探っていきました。金融機関にも何十行とあたって、ようやく糸口が見えた形です。
武田さん建築雑誌には、完成した建物の話は出ても、「どういったプロセスで実現したのか」は見えにくい。でも実際は、そういった条件整理の積み重ねが、建築の実現を大きく左右します。そこを創造系さんが担ってくれたからこそ、僕たちは設計に集中できたのだと思います。
――その中で、井上さんはどんな動き方を意識していましたか。
井上さん 銀行が求める資料や考え方と、建築家が扱う図面や設計意図は、必ずしもそのままではつながりません。だからこそ、「銀行は何を見ているのか」「設計側では何が必要なのか」を翻訳し、あいだに立つ意識は強く持っていました。

佐久山さんそれがすごくありがたかったです。私たちは設計のプロですが、土地や融資の手続きまで全部を自分たちでカバーできるわけではありません。井上さんが整理しながら進めてくださったので、とても助かりました。
武田さん土地やローンのことをプロに任せられるのは大きかったですね。施主さんにも、僕らにとっても、すごく心強い存在でした。創造系さんがいなかったら、このプロジェクトは前に進まなかったと思います。
井上さんありがとうございます。「全部の業務を自分が抱え込む」というより、「プロジェクトに関わる全員がそれぞれの役割を果たせる状態をつくること」もかなり意識していました。そのために、「いつまでに何の書類が必要か」「審査にどのくらい時間がかかるか」といった工程表はかなり細かく見ていましたね。設計側に気持ちよくバトンを渡せるよう、先回りして整える感覚はありました。でも武田さんの建築には、いつも驚かされます。この大きなピロティ空間を、施主との対話で作り上げていくプロセスには興奮しました。
――建築家の立場から見て、創造系不動産の価値はどこにありますか。

武田さんこれから家づくりは、もっと難しくなると思っています。土地の条件も、お金の問題も、時間の制約も厳しくなる。設計領域だけでは解決できない課題が増えていったときに、不動産の側面から協力していただけるのはすごく大きな価値だと感じます。

佐久山さん私も同じです。土地やローンの部分が固まっていないと、設計は前に進みません。逆にそこが整えば、私たちは建築に集中できます。難しいプロジェクトほど、その重要性を感じます。
井上さん建築家の方々の力を借りられる立場にいることは、僕たちの強みでもあります。銀行審査を進めるにも、法的な整理をするにも、建築家の図面や協力が必要です。単独で何かを解決するのではなく、チームで進める。そこに、創造系らしさがあると思っています。
――今回の経験を通じて、あらためて感じたことはありますか。

井上さん難易度の高い案件は、大変な分だけ面白さがあります。通常の住宅ローンでは出会えない課題があって、みんなで解き方を考えられる。今回は、僕たちだけではなく、銀行の方にも一緒に向き合っていただきながら、「どうすれば実現できるか」を探っていきました。そのプロセスは、すごく面白かったですね。完成した建築を見たときの嬉しさも、非常に大きいと感じました。

武田さん普通なら止まってしまう条件でも、向き合い方次第で前へ進める。それを実感したプロジェクトでした。 建築家ができることには限りがあります。 一方で、施主さんが抱えている課題は、建築だけでは解決しきれません。 だからこそ、他業種とタッグを組み、複眼的に問題を見ていくことがますます大事になると思っています。
佐久山さん住宅に限らず、世の中には難しい条件を抱えたプロジェクトがたくさんあります。 これからも創造系不動産さんと一緒に、そうした条件をひとつずつ乗り越えながら、理想の住まいをかたちにしていけたら嬉しいですね。

建築家からのコメント
土地や不動産の側面から設計を支えてくれる創造系不動産の存在は、とても大きかったです。 建築で解くべきことと、不動産で解くべきこと。 そのバランスをプロジェクトごとに的確に見極めていくことが、今後も施主さんにとっての価値につながると確信しています。