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PROJECT STORY 3

建築の思想を、成立する事業へ。
クリエイティブを、市場に届く価値へ。

今回ご紹介するのは、代々木上原で進んだ集合住宅「上原坂道のマンション」のプロジェクト。オーナーが持つ土地に、隣地を買い足すべきか。誰に、どんな暮らしを届けるべきか。設計だけでは決めきれない論点が、いくつもありました。

だからこそ必要だったのが、建築の思想を理解しながら、事業性や市場性まで含めて伴走する存在です。ULTRA STUDIOのクリエイティブと、創造系不動産の不動産・収支・リーシングの視点。その両方が重なったことで、このプロジェクトは作品であると同時に、「成立する事業」としてかたちになっていきました。

上野 有里紗さん(ULTRA STUDIO 共同主宰)

向山裕二さん、笹田侑志さんと共に、東京を拠点とした建築コレクティブ「ULTRA STUDIO」を主宰。住宅に加え、オフィス内装、ファッションブランドのポップアップ、アートフェア展示、橋梁のような土木的プロジェクトまで幅広く手がける。機能性だけでなく、建築のアイデンティティとなる形態や、色・装飾を積極的に取り入れる姿勢も特徴。

高橋 寿太郎(創造系不動産)

不動産・収支・リーシングの観点からプロジェクトを支援。隣地取得の是非を含む収支比較、銀行対応、市場調査、ターゲット検討、設計に対する不動産的なフィードバックまで幅広く伴走した。

――まず、このプロジェクトはどのように始まったのでしょうか。

上野さん施主さんが持っている隣の土地がちょうど空いており、集合住宅を計画することになったんです。それにあたり、隣地を買い足したほうがいいのか、それとも今ある敷地だけで計画したほうがいいのか、検討している段階から話が始まりました。

施主さんは、いわゆるディベロッパーではなく、不動産のノウハウがあるわけではありません。私たちも、建築のことは分かっても、「この規模の収支をどう見るか」「銀行とどう折り合いをつけるか」といった事業計画に関わることは分からず、悩んでいたんです。

高橋最初の出会いは、弊社の片山浩一がULTRA STUDIOさんの展示を見に行ったことがきっかけでしたよね。その後、一度別の住宅案件でご一緒させていただいて。

上野さんそうですね。創造系不動産さんは、ライフプランまで見据えながら、予算の組み方やローンの考え方をかなり具体的に整理してくれたんです。デザインだけでなく、お金の話まで含めて会話できたのが印象に残っていて、今回また創造系不動産さんに相談することを決めました。

――今回のプロジェクトは、どのように進めていったのでしょうか。

高橋まず行ったのは、隣地を買い足して規模を広げた方が良いのか、それとも既存敷地だけで進めた方が良いのかを比較することです。不動産収支計算書を二つのパターンで作り、どちらの方が事業として成り立つのかを数字で見える化しました。

その後は、スタディ模型や図面が出てきた段階から打ち合わせに参加して、「借り手にどう受け止められるか」「賃料帯はどのくらいが現実的か」「近隣の類似物件と比べ、どんな強みや課題があるか」といった観点で意見を交換していきました。そういった取り組みを重ねながら、ウルトラスタジオさんは、設計と事業性を同時に詰めていった感覚です。

上野さん特にターゲット設定については、プロジェクトの最初から最後までずっと議論していましたよね。建築家としては、実際に住む人の感覚を想像したい。でも、今回は全部の部屋の間取りも面積も違っていて、未知のことが多かった。だからこそ、創造系不動産さんとお話できたことは大きかったです。

高橋ありがとうございます。この街で、ULTRA STUDIOのクリエイティブがどう受け取られるか。模型や図面を見るだけでなく、街をしらみつぶしに歩き、参考物件を見ながら一緒に考えていきました。

上野さん富裕層、クリエイティブ層、代々木上原という立地。大きなくくりではそう整理できるんですが、実際にどんな人がこの空間に魅力を感じるのかは、もっと細かく考える必要がありました。 どのくらいの年齢か、どんな働き方か、どう暮らすのか。そこはかなり議論しましたね。結果として、個室を増やすより、広いワンルームやスタジオのように使える空間のほうが合うのでは、という方向に設計方針が変わっていった部分もありました。

――創造系不動産の関わり方で、特に心強かった点はどこにありましたか。

上野さん 私たちがクリエイティブに集中できるよう、支えていただいたことです。悩んだら、メッセンジャーですぐに相談できたので安心感がありましたね。「この間取りや仕様が借り手にどう受け止められるのか」「設備はどこまで必要なのか」といった細かいことも、フラットに聞いていました。

高橋僕たちは、いわゆるデベロッパーのように「こうしてくれ」と上から決める関わり方はしません。全員が設計事務所出身のメンバーなので、建築の造形や思想を起点に考える感覚が強いんです。まず建築があって、それを不動産市場でどう解釈できるかを一緒に考える。ご相談を受けたときも、その点は強く意識していました。

――不動産的な視点といっても、かなり建築に寄り添った見方だったんですね。

高橋そうですね。不動産って、面積や賃料といった「条件」だけで語られがちですが、それだけでは建築の魅力を捉えきれない。今回のプロジェクトでいえば、段差や空間の奥行き、窓の見え方……。建築独自の世界観があるからこそ、それをどう市場に翻訳するかが大事でした。だからこそ常に、この部屋を実際に案内するつもりで図面を見ていましたね。

実は弊社では、建築のクリエイティブを事業として成立させるために、「VFRDCM」という独自のプロセスを定義しています。一言でいえば、「建築の思想を事業に着地させるための、全方位的な伴走プロセス」です。創造系のメンバーは全員、この6つの視点を常に持ちながら、プロジェクトの最初から最後まで一貫して関わります。どこか一点でも欠けてしまえば、良い建築を事業として持続させることはできない。だからこそ、私たちはその「すべて」に伴走することを大切にしているんです。

上野さんそうやって伴走していただけたからこそ、私たちも「これでいいんだ」と思える場面が多かったです。一般的な富裕層向けの正解に寄せるのではなく、ULTRAらしい提案をどう成立させるか。その点で、創造系不動産さんに後押ししていただけたのは大きかったですね。

高橋僕たちとしても、建築に追従しながら関わることの意味を改めて感じたプロジェクトでした。収支や条件だけで判断するのではなく、建築が持つ魅力や思想を理解したうえで、それをどんな入居者に届け、どう事業として成立させるかを考える。 改めて、そこに創造系不動産の役割があると思っています。そして建ち現れた、この素晴らしい建築作品に関われたことは、本当に誇りです。

建築家からのコメント

建築の思想を理解したうえで伴走してくれる存在がいることで、設計者は安心して挑戦できます。今回のように、自分たちにとって未知の規模や領域に踏み込むプロジェクトで、またご一緒できたらうれしいですね。

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